【アルバムレビュー】奥田民生「29」 100倍楽しく聴ける本人による全曲解説付き

      2019/06/13




「愛のために」は一歩間違えると

「充分休んだおっさん」

というタイトルになるところだった。

 

どうも!

奥田民生ファン歴26年のエフジューです。

今回はこちらのアルバムをご紹介します。

 

奥田民生

『29』

発売日:1995年3月8日

 

アマゾン評価 ★★★★★

5つ星のうち 4.7

 

<収録曲>

01.674
02.ルート2
03.ハネムーン
04.息子
05.これは歌だ
06.女になりたい
07.愛する人よ
08.30才
09.BEEF
10.愛のために
11.人間
12.奥田民生愛のテーマ

 

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奥田民生のソロデビューアルバム

シングル「愛のために」「息子」を収録した、ソロデビューアルバム。

アルバムタイトルは当時の奥田民生の年齢そのままですね。

(ちなみに2枚目のアルバムは「30」)

ソロデビューシングルの「愛のために」がいきなりミリオンヒット。

続くセカンドシングル「息子」もスマッシュヒットとなり、まんをじして登場したアルバム。

ユニコーンを解散して半年くらい音沙汰がなかった状況で、ファンにとっても待望のリリースだった事もあり、アルバムもミリオンヒットとなりました。

 

当時買った人はドギモを抜かれたと思う。

おそらく当時このアルバムを買った人の多くが、「ユニコーン的なもの」「『愛のために』みたいなポップなもの」を期待してたと思うんですよね。

ところがどっこい。このアルバムの全体的なトーンは、まー暗い暗い。笑

1曲目からして弾き語りで「674」(むなしい)ですよ?

シングル以外で明るめな曲は「BEEF」くらい。

あとは暗い曲、もしくは実験的な曲ばかり。

ワタシも当時、相当面くらいました。

「なんなんだ?これは?」と。

 

いわゆる「いい曲」だけが、すばらしい音楽ではない。

でも、繰り返し聴いてると印象が変わっていったんですよね。

「ああ、音楽ってこんなに自由でいいんだな」と。

それまでワタシは、いわゆるヒットチャートの上位に来るような曲ばかり聴いてたんですが。

「一般受けする音楽」ではないものに触れる事によって、その後の音楽ライフがガラっと変わったんですよね。

そういう意味ではワタシの人生を変えてしまった1枚とも言えます。

奥田民生が当時のインタビューでこう語ってました。

「万人受けするものって、あんまり好きじゃないんだよね。例えば10人いたら、3人くらいがものすごくいいって言うような、そういうものが好きなんだよね。」

 

ライブで見ると、これがまたすさまじくかっこいい。

アルバムが出て数か月後、ソロ最初のツアーのライブビデオが発売になりました。

あ、当時はまだVHSです。

これがまた素晴らし過ぎてですね・・・。

当時ギターを始めたばかりだったんですが、まあ、とにかくこのビデオを繰り返し見ながらコピーしてました。

完全に「奥田民生になりたいボーイ」状態でしたね。

あまりに見過ぎたためにテープが劣化して絡まって、もう1本買い直した位です。(実話)

 

ちなみにこのビデオです。

その後、VHSの再生デッキがなくなったので、DVDでも買い直しました。

何本買ってるんだ。笑

 

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本人による全曲解説

さて、ここからは「FISH OR DIE」に掲載されてた本人による全曲解説をご紹介します。

これを読めば「29」が100倍楽しく聴けること間違いなし!

ですが、相当長いので興味がない方はブラウザバックして頂いて結構です。

ここまでご愛読頂き、ありがとうございました。

さようなら。ごきげんよう。

 

 

 

 

・・・あれ、まだ見てくれてますか?

 

 

・・・大丈夫ですか? 長いですよ? 笑

 

※ 各曲の再生ボタンをクリックで試聴できます。試聴は無料です。

 

1.674

 

674
奥田 民生
¥250

この曲は自然発生的に放っといてできた曲の部類です。バンドのことを考えないで曲を書くと、弾き語りっぽいのが多くなりますね。人前で演ってるのを想定したわけじゃないけど、なんかそうなってしまったと。いきなり孤独感のある曲なんですけど。何も考えないでギターをジャンジャカとやってスラスラっとできるやつはだいたい暗いのが多いですわ。「ハネムーン」とか「息子」もそうなんですけど、明るい歌が出てこなかったですよね、結果的に。ユニコーンの最後のほうからの傾向なのかもしれないですけど・・・。どうなんでしょう。自分のなかでも流行りの展開とかメロディとかあるじゃないですか。それがたまたま暗い時期にあるんじゃないかと思うんですが。

まあ派手派手のになっちゃうとね。派手派手の活動をせにゃならんだろうなと(笑)そういう危機感があったので、出来れば落ち着いた感じのほうが後々活動がしやすいじゃないかと思ってましたが、その程度で。

なんとなくひとりになって曲を作らない時間が流れて・・・。それで最初に曲作りしたときの気持ちって「674」に表れてるんでしょうかね。今回は締切もなかったですからね、最初は。あいだが空いてたんで気持ち的には煮詰まらずにどんどん出てきたわけですよ、いろんなメロディがね。ラクっちゃラクでしたけどね。前はだらだら作るのはラクだ、締切なんて作ってもらっちゃー困るとは思ったんですけど、結局煮詰まり度は一緒であんま変わんないんですわ。休みの間に曲作れったって作らないと(笑)ユニコーン時代、締切はイヤだなっと思ってたけど、そうでもなかったのかなって。あのころは締切がなければもっといい曲作れるんじゃないかと思ってたんで(笑)

 

2.ルート2

ルート2
奥田 民生
¥250

これはもうやっつけの(笑)ニューヨーク(以下NY)行きが決まってから、新たに作ったのがこれと「BEEF」と「人間」でね。メンバーを想定して作った。聴けば分かるように、この3曲は非常に簡単だと。シンプルな方が外国人は喜ぶだろうということで。ってより、向こうで構成とかいちいち説明するのがいやだったの(笑)

実際NYでやったら、メンバーは飲み込みが早かったですよね。その辺はぼくのほうがいい加減で、「なんだ、これは」ってよく言われたんです。一応デモテープ入れたやつを聴いてもらってね、なんとなくの雰囲気は伝えたんですけど、あとは勝手にやってくれって感じ(笑)アレンジを打ち合わせることは全然なかったですからね。リハのときにちょこちょことやって、「テンポはこれくらいだ」とかしか言ってないんです。

でも、このメンツは恐ろしいと。ちょっとビビったですけど。いや~、ぼくは全然英語が分からなくて、この人たちだけで盛り上がってるわけですよ。そういうシーンがよくあるわけですよ、「何言ってるんだろう」って、これ、本当にオレが主役なのかって(笑)まあ、ミキサーのジョーがプロデューサーということで仕切ってくれましたから。彼とは前からやってて、オレがどういう音が好きかってのは知ってたから、任せちゃいました(笑)

このルート2ってのは広島の2号線のことです。昔の車が出てきたりするんですけど、広島で女の子を連れてドライブするっていう、広島の人なら知ってるお決まりのコースってのがありまして。そういう歌ですね。NYで詞を書いたんですけど、どうしたこんな歌になったんでしょうね。まあ、ロックンロールはドライブだということで(笑)エンジンがかかってるような気がしたんでしょうね。

 

3.ハネムーン

ハネムーン
奥田 民生
¥250

「ハネムーン」はけっこう前に作ったものです。なんかオレの曲ってメジャーのコードをやたら使うイメージがあってね。放っておいたらメジャーな曲ができてしまうと。だから敢えて、最初っからメジャーを抑えないで作った曲です。

詞はレコーディングやっていくうちに浮かんできたものですね。詞は意識しないと出て来ないと言うか・・・ふにゃふにゃ鼻歌を歌ってるときに出てくるんです。だから、この詩のきっかけは、頭が「あ」だったとかそういう程度のものだったんじゃないかな。「あ」じゃなくて「ぅあ」から始まるんですよね、そのイメージですわ。

これもNYで録りました。あの人たちは放っとくとどんどんテンポが遅くなるんですよ。で、もうどうしようもなく遅くなったときに「遅くないかい?」って言うという(笑)歌うほうは息が続きません(笑)

でも、NYのメンバーはそれぞれ面白い人でしたね。ワディー・ワクテルの音がとにかくやたら太くて驚きましたね。ぼくのギターとかで弾いてくれたりしたんだけど、どうして同じ楽器なのにこんなに太い音が出るのかなって。一流の名手という人のギターを目のあたりにしました。

パーニー・ウォレルはすごく気のいいじじいでね。本当にじじいなの、腰に腰痛ベルトして。「この曲は変わってる。聴いたことがない~」って叫んでましたね。それでもってひとりで「ん~」「あ~?」って言いながら弾いてました(笑)今回、メロトロンとか使って喜んでましたね。メロトロンは音に味があっていいんですけど、操作がたいへんですね。弾いてるそばからチューニングがずれたりして。入魂のフレーズを弾いたあと、「クレジットに必ずメロトロン・アレンジ・バイ・パーニー・ウォレルって書いてくれ」ってしつこく、しつこく言ってましたよ(笑)

 

4.息子

息子
奥田 民生
¥250

こういう曲はぼくのなかで楽勝というか定番なんでスルスルとできました。メロディなんて考えてない。全部で10音も使ってないだろうって曲(笑)

スライドギターは絶品ですよね、これは。最初はもっと下世話なオーケストラ・アレンジだったんですよ、ぼくのなかのイメージでは。間奏とかも弦ものがワラワラと入る感じで。NYに行ってシンプルになりましたね。それでスライドも入り、全然こっちのほうがいいと。メロトロン使ってみてるんですけど、実際前に出てきてないから印象はシンプルですよね。

よく、どうしてこういう詞を書くんですか?って聞かれるんだけど、いつも答えられない。それは神様が・・・って感じ(笑)まあ、きっかけってのはありまして、これは跳ねてる感じでしょ。それで「いじめっこ」とか「いっちょまえ」「べっぴんさん」ってのがハマるじゃないかと。小さな「つ」が入ってる日本語が入るだろうなと。勝手に分析してますけど(笑)でも、「ほうら」から小さな「つ」が入ってないでしょ。跳ねなくなるんですよね。そこらへんをNYの方々も察してくれたのか、自然と演奏もそこから跳ねなくなりましたよね。

これは最後のほうにアズキソーバとか言ってるんですよ。歌詞には載せてないですけど(笑)

 

5.これは歌だ

これは歌だ
奥田 民生
¥250

 

これは駄作でボツになりかけた曲をNYで救ってもらったやつ。ジョーを含め外国人チームはこれがいちばん好きだったみたいですね、盛り上がると(笑)理由はよく分からないんですけど、なんか今いちだなってイメージがひとりでやってるときにはあってね。そうズーッと思ってて。向こうではこの曲でやたら盛り上がってて、いい曲なのねって感じ。

これもテンポがどんどん遅くなっちゃって演奏が止まりそうになる(笑)唯一止まりそうにないのが途中のギターソロなんですけど、僕が弾いてるんで(笑)でも、僕はワウ(エフェクター)でギターやったことないですからね。苦労しましたけどね。

詞に関しては、最初の仮歌をそのまま使おう、そういうのも面白いんじゃないかと(笑)でも、そういうわけにはな~ってことで、煮詰まってネタつきたときにできた内容ですね。歌詞なんて作るの面倒くさい、歌にいちいち理由がいつのかっていう反抗心が歌われてるんですね。だれに怒ってるんだって、勝手にひとりで煮詰まってるだけなんだけどね。歌なんて何を歌ってもいいんだって逃げをかましているわけですね。これはNYのホテルで書きました。

NYには1ヶ月くらいいて、ちょっと余裕があったから、そんなに詰まってはいなかったです。でも、最後はギリギリでしたけど。1ヶ月いるとさすがに慣れて、もう1ヶ月いてもいいよって(笑)最初は初対面の人がいっぱいだったんで帰りたかったんですわ。それに便秘になりましてね。スタジオのトイレの便座がやたら高いんですわ。爪先立ちになっちゃって、力が入らなくて(笑)目の前にデカイ鏡があって、それに向かって「出ね~」って叫んでました。

 

6.女になりたい

女になりたい
奥田 民生
¥250

これはつい地が出た、つい作ってしまったと(笑)こういうのがなくなって、ソロになって真面目になったって言われるのもイヤなんでね(笑)

アコースティックな感じがいいでしょ。全体的にはどうなのかなってところですけど、ベースとギターがぼくなんでリズム的にはこの2つは合ってますね(笑)これは結構すてきな独自のグルーブが出てるんじゃないかと。

僕はガットギターを持つとビートルズの「ハニー・パイ」みたいなものを弾きたがると。手に取るギターによって弾くフレーズが変わってくるじゃないですか。この曲はそこから始まりました。

この詞もこういうものにしたかったってわけじゃなくて、最初「イタリアの風」って言葉が出てきたんですよ。これって字余りな感じがするじゃないですか。だから、まともなことを言ってもまともに聞こえないだろうと。で、「イタリア・・・?女になりたい」と。全然関係ないんですけど(笑)モロッコって性転換の手術をよくやってるところでしょ。それでイタリアからモロッコへ行って性転換して女になる、あるいはモロッコで性転換してイタリアへ向かったと。歌詞のなかのミツオってのはぼくの友達のお父さんの名前(笑)友達はミツヒデっていうんですけど、ミツオって言いやすかったんですよ。まあ、なんでもよかったんです。別にヨシオてもよかったんですけど。

声はね、笑顔の声で歌ってみたら、こういう声になったと(笑)この歌を普通に歌うと面白くなかったんですよ。でも、スタッフが感謝でこの曲をかけてても誰もオレだと分からなかったらしいですよ。オレだって言うとみんなすごく変わったって言って・・・。そんなに違いますか?

 

7.愛する人よ

愛する人よ
奥田 民生
¥250

この曲は最初、「日はまた昇る」ってところの15秒間だけあって。「すばらしい日々」みたいでオレはイヤだったんですけど、CMの人が非常に気に入って使いたいと。それで15秒だけCM用にレコーディングしまして。で、シングルのカップリングぐらいにはせよということで、残りはあとからくっつけて。最初はCMで使われる部分がサビの部分だったけど、Bメロになっちゃいましたね。まあ、Bメロもサビみたいなもんですけど。

これはぼくがベースとギターとシンセやってるんですよね。最初のギターは往年のダサいロックみたいな(笑)それから、かわいい展開になると。出だしは愛してます。なかなか最近ああいう出だしを見せるプレイヤーもいないだろうと(笑)それと最後のかわいいシンセサイザーの入魂のフレーズがいいでしょ。指1本で操作すれば弾いてくれるマシンなんで楽勝でしたけど(笑)

マイケルさんのドラムもね、非常にアクがあってヘンなんですよね。リズムもヘンじゃないですか。普通の8ビートやってっていうと出来ないっていうか・・・。ヘンなんですよ。手数の多いやつはうまく出来るのにね。だから、へんにカクカクしちゃってて。それはこの曲に合ってるんだけど(笑)「スプリングマン」で何曲か叩いてもらったときも、独自のスネアのタイミングがありましたから。

この曲のレコーディングのときには、スタジオに人が全然いなくてね。まあ、最初デモテープのつもりだったってのもあるけど、ミキサーとおれひとりってのあったよ。だから、アンプもひとりで運んだりしてさ。録っても周りに人がいなくてリアクションがないから、いいのか悪いのか分からなくてね。人が少ないってのもなんだね。わけのわからん人までいて多すぎるのも困るけど、いないよりはいいかなって思いましたよ。マネージャーもローディーも居なくなって、「仕事してきます」って(笑)フシギな感じで新鮮でしたよ。

 

8.30才

30才
奥田 民生
¥250

これはできあがったときに極端なミックスをしたんですよ。ベースとかがボウボウにデカくて歌が小さかったのね。で、やたら不思議な感じで、デモテープのつもりでもあったからこれでOKにしちゃって(笑)あとで他のアルバムの曲と並べるとこれだけ浮いてるんですよ、わけ分からんて。で、マネージャーの原田さんがマスタリングでNYに行ったときに、なおしてもらって歩みよってきたんですけど・・・。印象が若返っちゃってね。もっと30才って感じだったのに24才くらいになったかな。

この曲はギター持たないで、なんとキーボードで作ってキーボードで演奏してますから。だから展開がないんですよ(笑)今までこういう作り方はしてないでしょ。初の試みですよ。でも、ギターで作っても変わらなかったかもね。自分の気持ち的にはキーボードで作ってるって盛り上がってるんですよ。今まではフレーズが出来ると、ギターのフレットが浮かんできてこれを鍵盤のこことここと・・・ってやってたから、ギターの方が早いし、モタモタしてるといいフレーズも忘れちゃうから、本当はキーボードに向かってる場合じゃなかったんですよね。こうやって作ってても結構弾かないで、想像でつくってたもん(笑)こういけばこうなるんだって。あげくに弾きながら歌えないんでね(笑)あとで歌を聴くととね、ああ、あのコードを使いたがってるのが分かる。全然キーボードで作ってないと言えよう(笑)向かってるだけでね。

これは詞がなかったら「ん?」って思うかもしれないけど、めずらしく詞が助けてくれたものですよね。なかなかいい詞ではないかと自分では思ってるんですけど。最後はバックではなんの意味もないことを言ってますね。官能小説っぽいことを。聞こえないと思うんですが。

 

9.BEEF

BEEF
奥田 民生
¥250

スティーブ・ジョーダンがチャック・ベリーの映画で演ってたヤツ(ヘイルー ヘイルー ロックンロール)あのカッコいいズッコケをやりたかったんで、そのままリクエストしようと。よかったです。いい演奏でしたよね。これを聴いたまわりのものが「本物だ」と、歌以外は(笑)日本人にはできないノリが実際ありますね。NYに行っていちばんよかったという曲じゃないでしょうか。ソロのワディーさんのナイスな入魂のソロです。カレのリズムギターもほとんど聞こえてないですね(笑)ひとりノリが違ったのでしょう。きっと。

詞はけっこう悩んでね。最初英語で歌おうとしてね、英語の歌詞を「ジョー、君が作ってくれよ」と(笑)でも、できねーってことでぼくが日本語で作ることにしてね。だったら、外国から見た日本の歌にしようかなと。外国人が日本を見てまずびっくりするのは何かなと。牛がビール飲んでいるとか、マッサージ受けているのはどうだと。そういうような日本人に対する勘違いとか間違いを何個か出そうと思ってたんだけど、イメージが膨らみすぎて牛の歌になってしまった(笑)ジョーに「最終的に牛の歌にしたよ」って言ったら「え~!」って(笑)

「ひっこんでろ」ってフレーズは外国人たちも歌ってたよ。歌いやすいっていうか耳に残りやすいんだろうね。

こういう詞はね、悩んでも仕方ないっていうか。外国産はひっこんでろってのでもOKだろうということで。

 

10.愛のために

愛のために
奥田 民生
¥250

これはライブとかでね、呑気に自分たちも盛り上がっていけるんじゃないかという感じの曲を作ってみました。まあ、初めに作ったんで、シングルでどう?ってことで。

このアルバムには「愛のために」「愛する人よ」と「奥田民生愛のテーマ」と愛3連発ってのがありますが・・・、たまたまですね(笑)2個あったら3個だろうと。タイトルくらい大げさにしておこうと思っただけです。タイトルは悩んだんですよ。どれでもそうでタイトルはいつも悩むんです。で、煮詰まると詞のなかから取ろうと。それで「老けた男」とか「分かるよ、おっさん」とか「充分休んだおっさん」とかどんどん脱線して(笑)らちが明かないので一番簡単に「愛のために」にしました。

これもテンポが簡単そうで難しいんですよ。中途半端なテンポでね。歌も転調がいっぱいあって難しかったですね。こういう簡単そうなのが実は難しいんですよ。実際、展開が多いじゃないですか。終わり方とかも悩んだりしたしね。バックを川西(幸一)くんのいるバニラにお願いしたんだけど、彼も難しいって言ってましたよ。

川西くんのドラムはやっぱりかなり個性的な武器をもつリズムだと思うんですよね。この曲を作ったときにね、これは川西くんがバッチリ行くだろうなと、素直に思いました。どういうドラムだっていうのはなかなか難しいけど・・・。タイトでもルーズでもないけど、やっぱりスピードがあるんでね。シンプルに言えばロックっぽいじゃないですか。往年のロックっぽい。ぼくの好きなローファイサウンドにいちばん合うと。長年やってきたってことで気持ち的にも分かってくれるところが多いんでしょうね。で、その人のバンドだから、まわりもそうだろうということでバニラにお願いしました(笑)

 

11.人間

人間
奥田 民生
¥250

 

これは普通に演ってもフーンっていう普通の曲なんで、すごい人(NY)の演奏でどうだっていうことになってほしいという願いを込めて持ってったら、すごいということになりましたね。「BEEF」とこれが爆発してる感じがしますよね。本物ですよね。

ひねりもなく素直な曲でしょ。逆に言うと素直じゃないんですよね、わざと書かないという。

この詞もNYで書きました。遠く離れてて帰りたい気がする感じでしょ。NY行くと孤独感が押し寄せてきてね。オレは孤独だって思いましたよね、特に。NYのホテルでこんなこと考えてみましたって感じかな。まあ、こういうこともありますと、NYでは特に歩き回ったとか遊びましたってのがなかったからね。

これもパーニーのメロトロンがいいでしょ?でも、この楽器のメンテナンスする人がいるのかね。このときのメロトロンもメンテしてる感じではなかったけど(笑)今作ったらもっと性能のいいのが出来ると思うんですよね。でも、需要はあんまないかもしれない(笑)でも、オレは買うよ、絶対。どっかの変人が限定3台とか作ってそうだよね。絶対できると思うんだけどな、日本の技術でね。ソニーが出せばいいんだよ。アナログ集大成って(笑)でも、これはコストがかかりすぎるんでしょうね。いい楽器なんだけどな。

 

12.奥田民生愛のテーマ

奥田民生愛のテーマ
奥田 民生
¥250

これは自分でやってるんで、ドラムがずっこけてますね(笑)自分で演る曲のわりにまた難しいテンポなんですよ。結構苦労しました。「デモテープチックな演奏でもいい加減でもいい」って理由がつけられそうかなって思ってひとりで演りましたね。最初はこういう自力度の高いものばっかりだったんだけど、NYに持ってったりしたから残ったのは2、3曲ですよね。

NYで録ったのが全体的に印象が暗いだろうと。音も下のほうで曇ったイメージがあるんで、なんとなくアルバム全体もそういうのにしちゃおうかねと。他も暗めの雰囲気にしようと思ってそういうのを集めましたね。最終的にNYの音ってのがかなりイメージ的に前に出てきましたんでね。最初に思い描いたのとは違うっちゃー違う。だから、なるようになったんじゃないですかね(笑)結局何も考えてないってことで。次回に期待と(笑)まあ、アルバムとして全体を通しても、それなりに通したイメージがつくだろうと。「29」ってタイトルは・・・、もうすぐぼくが30歳ってのがあって。期待と不安が入り交じってる微妙な時期であることは確かなんですけど、一応29歳のときの記念です(笑)まあ、オレが50くらいになったときに、こういう作品を出した自分がはっきり分かるじゃないですか。分かりやすいと、ただそれだけなんですけどね。アルバムタイトルも例によって悩みに悩んだんです。

なんだかソロっていうのはね・・・。ソロって言われ方自体好きじゃないんですよね。作品集であるんですからね、ただの。ソロもなんもないっていうかね。活動の内容的には形態としておぼろげではあるけどバンド形態がいいんですね。だからソロ、ソロって言われちゃうと困っちゃうなと。「ひとりだから頑張れよ」って言われてるような気がするじゃないですか。ひとりでやることが偉いことでもないんでね。好きでひとりになったわけではないという気持ちがあるんです。だから、今このひとりの自分に甘んじてるわけじゃないんで(笑)居心地のいい形態ではないと。このアルバムに今の状況はよく表れてると思いますよ。

(出展:「FISH OR DIE」)

 

 

 

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